■国王物語〜第2ブリタニア王国誕生秘話〜■


【はじめに】
 


●Hokutoシャードには、実に1000以上ものギルドが存在しています。
UOで活動する以上、ギルドは仲間を得る場所であり、
同時にUOをより一層楽しく幅広くするものとして欠かせないものとなっています。
現に多くのUOプレイヤーは、少なからず何らかのギルドに所属していることでしょう。

 そこで、この物語を読む全ての皆さんに問います。

「あなたは今までいくつのギルドに所属し、それらのギルドから一体何を得ましたか?」
「あなたは「ギルド」と「自分」の関係に、身を焦がす思いをしたことはありませんか?」
「あなたのギルドは今、どこへ向かって進もうとしていますか?」

 ・・・そして、

「あなたは、今あなたが所属しているギルドがどのような思いで作られ、
どのように育てられてきたか、ご存知ですか?」

●この物語は第2ブリタニア王国(KSB)の王国民の希望により、
KSBが誕生するまでの秘話を現国王nasが書き記したものです。

 ギルドの数だけ誕生秘話もあると思います。ここではKSBが何故作られたのか、
どうして今のようなKSBになったのか、国王nasのUO活動から物語でそれらを追っていくことにしましょう。


【第1章】 Nas誕生と孤独な日々

●いつのことだっただろうか・・・まだ世界が一つだった頃か。
私がYewのEmpath Abbeyに生を授けたのは。期待と夢を胸一杯に抱えて、
勢い良く建物を飛び出したことは今でも覚えている。
 
 私が最初に見た世界は・・「恐怖の世界」だった。
Empath Abbeyを飛び出した瞬間、ガードに死刑にされた光景を目の当たりにしたからだ。
どうも死刑執行された人は、タウンクライヤーに襲い掛かったようだ。

「なんて怖い世界なのだ、ブリタニアは。」

今思えば、この出来事が「仲間が欲しい!」という気持ちをより一層強くしたのだろう。

 ブリタニアの世界に早く馴染めるように、期待半分、恐怖半分で私は手にもっていた斧を使い、
Yewにそびえたつ木々を切り始めた。
この世界で生きていくためには、 やはり金が必要だ。
私に与えられた能力は「木を切ること」。
ならばこの能力を腐らせておくのはもったいない。
木を切ってたんすを作り、 世間話一つしないベンダーへ売り払って小銭を稼いだ。
また木を切っては、 椅子を作って一人寂しく座っていた・・・
そんな日が何日も続いた。

 いくら生活のためとはいえ、これでは楽しみもなければやる気もなくなる。
いつしか私の心はあるものへ向かっていた。 「仲間が欲しい」
 
●ブリタニアには「ギルド」というものがあった。
なんとそこでは、同じ志を持つものが集まって色々な活動をしているというのだ。
「これしかない」なんのためらいも無かった。

【第2章】 初めてのギルド

Hokutoには様々なギルドがあったが、その中でも特に目を引くギルドがあった。
ギルドABC(仮名)だ。「初心者にやさしいギルド」を謳い文句にしている某大ギルドだが、
当時は私で9人目のギルド員だったことを記憶している。)

 初めてのギルド−私は期待と不安で一杯だった。
この世界に降りてまだ2週間。PKが怖くてYewの町からなかなか踏み出せない私を、
ギルドは認めてくれるのだろうか−

 そのギルドはムーングロウにギルドハウスを構えていた。
ここはYew。一体どうやって行けばよいのか・・・。
入会を希望したものの、若すぎた私には、成すすべを考えることすらできなかった。

 しばらくして、ABCの称号をつけた二人の人間が私の目の前に現れた。
ギルドマスター(ギルマス)とギルマスを影で支える人だ。
なんと、ギルドハウスへどうやっていくのか分からない私を迎えにきてくれたというのだ!

 ムーングロウのギルドハウスには、既に何人かのメンバーが待ち構えていた。
ABCでは特にメンバーを呼び出して歓迎会などはしていなかったが、
それでも普段はギルドハウスの近くで活動している人が多かったので、
自然と人が集まってくるのだ。 「ああ、これがギルドっていうのか。なんて暖かいのだ!」

 もはや私には、ギルドなしの生活など考える余地はなかった。
いつしか、「ギルドのみんなとどうやって楽しもうか」そればっかりを考えていた。

  ギルドに入って何ヶ月か経った。ここ数ヶ月活動をしていて、あることに気づいた。
「最近、狩とトレハンしか行っていないなぁ」 普通の生活。
あまりにも当たり前すぎて忘れていたぐらいだ。
そんなことを考えている矢先、メンバーの誰かが話題作りでこう言った。
「私、今日誕生日なの♪」 「誕生日か・・・お祝いしてあげたいな」ごく自然にそう思った。
別に誕生日に特に思い入れがあるわけではないが、
普通の生活に何かアクセントをつける「きっかけ」が欲しかったのも知れない。
「お誕生会、やろうよ!」 私は早速、自慢の樵スキルと大工スキルで木を切って、
ギルドハウスの前に机を作り、椅子を並べた。
当時の私は矢を作ってベンダーで売っていたこともあって、
資金にもいささかの余裕があった。
そのお金で食べ物や酒をバック一杯に買ってきて、机の上に豪勢に並べた。
お遊び用のサイコロも買ってきた。そのサイコロでギャンブルもした。
たった5〜6人のお誕生会だったが、ブリタニアで生まれて一番楽しかった出来事かもしれない。
別にスキルをあげるわけでもない。
トレハンのように資金をギルドへ納めてギルドに貢献しているわけでもない。
でも、楽しいのだ。好きなように飲み、好きなように話し、好きなように暴れる!
「皆でわいわいやるって、本当に楽しいよね♪」

 この出来事と楽しさのために、私がABCを辞める結果になるとは、誰が予想できただろうか。


【第3章】 希望ととまどい、そして別れ

お誕生会が終わって、ふと思った。
「もっと大規模でわいわいできたら・・・もっとお金なんかもかけて、
皆が興奮するような何かが出来たら、もっと楽しいだろうな」


 その思いをギルドマスターへぶつけてみた。
ギルドとして誕生会のようなものをやりたいと。

  結果はNo Good。「スキルアップにつながらないイベントは控えて欲しい」
−ABCの基本理念は「お互いにスキルアップをしよう」だったので、
これはしょうがない、と一時は諦めた。ギルド員がギルドの方針に従う、
それは当然であり義務であると思う。
 しかし、どうしても諦めきれなかった私は、 次のような質問をした。

「ギルドとして行わなくても良いが、皆が楽しめるように何かイベントをやるときは、
ギルド資金を幾分まわしてもらうことはできないだろうか?」

「だめだ。資金は新しく入会した人に配る防具セットやもっと大事なことに使う」

「じゃあせめて今、資金がどれくらいあるのかだけでも教えてください」

「それは教えられない」


 会話を続けていくうちに、自分のやりたいこととABCで出来ることに隔たりがあることが分かってきた。
「このギルドじゃ、私が望むようなことはできない」

 そう考えていたのは、私だけではなかったようだ。
ギルマスから一通の手紙が届いた。
「新しいギルドを興してみてはどうですか?」

 ギルドを出て行くこと自体に躊躇はなかった。
自分のやりたいことを実現する。それを実現場が新しいギルドの設立であるのなら。
でも、どうしても、私の心の整理ができない部分があった。

 「私はABCの仲間を捨てて、今までの感謝の気持ちを形に出来ないまま立ち去ることができるのだろうか」

 私は悩んだ。ABCを出て行けば、私はまた孤独に戻る。
それに今までの恩返しだって、まだ何もしていない。
出て行くべきか、出て行かざるべきか・・・。

 最後に私が判断した結果は・・・  「ABCギルド、退会させて頂きます」

 自分のやりたいことはどうしても捨てられない。 自分が自分であるために。
「恩返しは新しいギルドで新しく入ってきたメンバーに返そう、それで許して欲しい。」
そう思って出した結論だ。

 かといって、今すぐギルドを興せるような資金も無い。
とりあえずは、「別のギルドで新しいギルドを設立するための資金稼ぎと経験を積むか」と自分自身に言い聞かせた。

【第4章】 王国ギルドとの出会い

ABCを辞めて数週間、私は新しいビジョンを持ったギルドを捜し求めていた。
木を切っては様々なギルドハウスを訪れ、弓を作っては新しいギルドの構想を練っていた。

 そこで見つけたのが、ギルドDEF(仮名)。なんとそこは、王国風のギルドだった。
〜卿なんていう人がいるではないか!

 ブリタニアの中にDEFという「王国」がある。
私にとって、魅力たっぷりのギルドであるように見えた。

   だが・・・入って愕然とした。
王様がいない。国民がいない。 いるのはギルドハウスにたたずむベンダーのみ・・・・。

 これでは王国どころではない。まさに崩壊寸前のギルドだった。
私の野望は、ほんの数日で行き詰まった。
「当分は一人で生きていかねばならないか・・・」

 実際、KSB設立まではずっと孤独だった。でも悲しくは無かった。
DEFギルドを参考に、新しい王国を自分の手で作ってやろうと思っていたからだ。
結局、ギルドストーンを買うまでには随分と時間がかかったが。

【第5章】 二番目のLord Britishと第2ブリタニア王国誕生

<ギルドハウスはどうやって手に入れたのか?>

 ところで、私は戦うことが好きではなかったので、
ABCギルド時代からひたすら矢を生産してベンダーで売り払い
(この時はベンダーデパートの一員として働いていた)
資金をこつこつと貯めていた。
同時に、ギルドハウスの元となる家をオークションで捜し求めていた。

 とあるさびれたオークションで、SH(スモールハウス)が
60K(60000GP:DEEDの1.5倍の値段)で売りに出されていた。
場所はトリンシック南のジャングルを抜けたところ。
交通の便は非常に悪いが、金額と場所を選ぶほど私には余裕が無かった。

 早速、売主に掛け合ってみた。
どうやら売主はHokutoの財産を売り払って、 他のシャードへ移るようだ。
きっと、この売上も別シャードの資金へ交換する予定なのだろう。
「60Kギリギリしかないが、ギルドをどうしても作りたいので是非売ってほしい」
ABCギルドにいた頃から家は欲しかったが、使う目的はあまりはっきりしていなかった。
これでは家を売る側も、それなりの対応しかしなかったと思う。
しかし、いざABCを辞めるかどうかというときにこのような機会が回ってきたので、
家を買う目的がはっきりとし、それに伴って「家がどうしても欲しい!」という熱意も出てきた。
それはきっと、売主にも伝わったのだろう。

「もうHokutoは来ないつもりだし、無料で差し上げます」

一瞬、耳を疑った。100K、200Kと金に糸目をつけずに要求してくる売主が多い中で、
60Kという破格な値段で取引をしていたことにも驚いたのに、
なおさら「無料でいい」など言われるとは思っても見なかったからである。
きっと「どうしても家が必要なんだ!」という気持ちが伝わったのだろう。
「ブリタニアも捨てたものじゃないのだね」 そう思った。
暖かい売主の気持ちに、ただただ感激するだけだった。
もう名前も忘れてしまいましたが、あなたは間違いなくKSBの「Lord British」ですよ。

<第2ブリタニア王国誕生>

 DEFを辞めるまでの経緯、家を手に入れた時の経験もあって

「ギルドABCよりも楽しいギルドにしてやる」
「ギルドDEFのように外面だけのギルドにはしない」


という気持ちが強かった。
その間、王国憲章の制定を始めとしたギルド設立のための準備を、
ABCの一部のメンバーに手伝ってもらいながら、確実に進めていた。

 そして・・・「私が私であるために、私がやりたいことができるギルドにする」
そう決心して以来、長いようで短かった孤独の日々は「第2ブリタニア王国設立」という形で幕を閉じた。
今までABCやDEFで出来なかったこと、
果てはどのギルドでも出来なかったことを実現するために私は一体何が出来るのだろうか・・・
ブリタニアに生を授けた時と同じように、期待と不安の気持ちで私は王国の扉をゆっくりと開いた―

〜Fin.〜